再生医療についてREGEBERATIVE MEDICINE

L-PRP点眼による角膜上皮再生治療 高白血球多血小板血漿導入

  • 再生医療等提供計画(第二種) 計画番号/PB118002
  • 特定細胞加工物製造施設 施設番号/FC1180007

高白血球多血小板血漿による組織再生促進機序と至適調整法

PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)は国内では歯科口腔外科や形成外科の分野での使用に始まり、近年では整形外科での領域を含め、たくさんの臨床現場で使われている。眼科領域で我々が用いるのは、L-PRP(Leukocyte and Platelet-Rich Plasma:高白血球多血小板血漿)である。白血球は創傷治癒プロセスに複雑に関与しているが、組織の再生には幹細胞を含む組織 細胞の増殖・分化とともに、その細胞への血管新生が不可欠である。また組織再生の際に、抗炎症作用、疼痛抑制という役割も間接 的に果たしていると理解できる(図1)。PRPは試験管と遠心分離機を使用して抽出することも可能だが、血液成分の濃縮率が一定し ないなどの問題が起こっている。そこで我々は、L-PRP が毎回安定・一貫して抽出できる「GPSIII システム」を導入し、血小板と白血球 の効率的な自動分離を可能にした。角膜上皮再生治療で用いるL-PRPの濃縮率は、遠心分離前の全血中濃度に対して、血小板は 約6~9倍、白血球は約3~6倍に増加したものである。

GPS III システム
上記費用は、再医医療を単独で行なった際のものです。
当院の手術費用にはすべてこの再生医療の費用が含まれた手術費用になっております。

自分の血液を使った眼科再生医療

大リーガーの大谷翔平選手、田中将大選手が右肘を故障した 際に、PRP治療を行なったことがメディアに取り上げられ、PRPという言葉が世の中で注目されました。この治療は、自己修復力を高め て損傷部分の回復を促すものなので、体への負担が少ない治療 (低侵襲治療)として、一流のプロスポーツ選手が第一選択したのだと思われます。 PRP治療は自分の血液を利用する治療で、採取した血液から遠 心分離してつくられる「多血小板血漿(PRP)」を用いて行ないま す。血液の赤血球成分を除去した成分を使うのが通常のPRP治療です。 当院が治療用に調製しているのは『高白血球多血小板血漿(L-PRP)」で、PRPに加えて白血球も多く含むため、L-PRPを治療 に用いています。白血球は創傷治癒プロセスに複雑に関与してお り、組織の治癒に重要な役割を果たしています。そのため、角膜上皮を低侵襲に、かつ早期に回復させるためにはL-PRPが最善であるとの考えに辿り着きました。
L-PRPは活性化されると、さまざまな成長因子(細胞の増殖・分化を促進するタンパク質)やサイトカイン(細胞シグナリング:特定の 細胞に働きかけるタンパク質)を放出します(裏面図2)。それらに よって生体が本来持つとされる自然な治癒反応が促進され、損傷 組織の増殖再生を促進、創傷治療の質を改善させる作用によっ て、角膜上皮の組織を再構築してくれます。また、炎症・抗菌など の領域でも重要な役割を担ってくれる作用にも期待しています。

L-PRPの生理活性と治療効果

涙は、角膜(黒目)に向かって「油層」「水層」「ムチン層」と3層構 造になっています。この3層のどこかに異常が起こると、涙が蒸発 しやすくなり、眼表面に傷がつきやすくなります。重症なドライアイ ほど角膜上皮障害はひどくなり、この状態を放置していると、乾燥 によって角膜混濁を起こし、視力が低下する可能性もあります。ま た、角膜の傷に細菌が入ることで角膜潰瘍になり急激に視力が下がることもあります。当院ではこうしたドライアイの重症な症状を根 本的に改善するために、L-PRPによる角膜上皮細胞の再生を促 進させる治療を積極的に行なっています。また、手術後の合併症 を防ぐ(抗菌作用)、手術創の炎症を防ぐ(消炎作用)、術後ドライ アイを防ぐ(角膜上皮再生)ために、白内障手術の症例に積極的 にL-PRP治療を実施しております。

L-PRPの生理活性と治療効果

L-PRPの生理活性と治療効果

L-PRPに含有される成長因子とサイトカインの一般的な機能

上皮成長因子(EGF)

  • 角膜上皮の移動および増殖を誘発する
  • 上皮細胞および間質線維芽細胞のDNA合成を刺激する
  • 上皮細胞によるフィブロネクチンの合成を刺激する
  • 抗アポトーシス効果

トランスフォーミング成長因子(TGF- B)

  • 角膜実質細胞の移動を減少させる
  • コラーゲン、フィブロネクチンおよびプロテオグリカンの産生を刺激する
  • 抗炎症効果

血小板由来成長因子(PDGF)

  • 単球、マクロファージおよび線維芽細胞に対する走化性効果
  • 筋線維芽細胞の分化を促進するTGF-Bとの相乗効果

フィブロネクチン(FN)

  • 創傷治癒および食作用を促進する
  • 角膜上皮修復過程における細胞遊走の重要な役割

アネキシンA5(Anxa5)

  • 細胞移動を促進するプラスミノーゲンアクチベーター型
  • ウロキナーゼの分泌を刺激する

アルブミン(Alb)

  • サイトカインや成長因子の分解を軽減

Α2マクログロブリン(α2-M)

  • タンパク質分解酵素を中和する

塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)

  • 角膜創傷治癒を促進し、細胞増殖および運動性を増加させる

神経成長因子(NGF)

  • 上皮細胞の増殖と分化を増加させる
  • 線維芽細胞の増殖を促進する
  • 角膜、結膜上皮細胞および免疫細胞に局在する特異的受容体に結合する

活性化した血小板のイメージ

活性化した血小板のイメージ

L-PRPの分離と抽出手順(調整法)

自己由来L-PRPの調整は、クリニックに隣接されたCPC(細胞加工施設)にて安全に行われます。 当院のCPCは、0.5ミクロン以上の微粒子が1フィート(30.48cm)立方中にそれぞれ10,000個以下という環境を整えております。
特定細胞加工物製造施設番号/ FC1180007

患者さんの血液を自己由来L-PRPを調整する特殊なキット(GPSⅢシステム)に装填します。
15分間の遠心分離で血小板を収集・分離します。
高濃縮の自己由来L-PRPの部分をシリンジの中に抽出します。